2013年1月21日月曜日

『中国人がタブーにする中国経済の真実』:最後はお札を刷ればよい?



●『中国人がタブーにする中国経済の真実』



石]:
 2011年を境に、中国経済のバラ色の時代は過ぎ去り、同時多発的な問題が吹き出します。
 中国のGDPはいくらかというと、2010年には「約33.5兆元(約480兆円)」です。
 中国の地方政府は、土地の使用権を譲渡することで財政をまかなっています。
 住民から安い値段で土地を吸い上げ、開発業者に高い値段で譲渡して利益を得るのです。
 それが2010年は全国で「3兆元」でした。
 つまり国内総生産のー割が、地方政府によると土地譲渡なのです。
 土地譲渡によって生まれたお金は、何らの付加価値を産まない。
 ただ、土地がある人からから別の人へ移っただけであり、そこからは新しい富が生じることはない。
 そんな収益が中国GDPの10%を占めている。
 さらに問題なのは経済成長を支えてきたのが、「インフラの建設」だったということである。
 それがどんな建物でもお金を出して建てれば成長率は上がる。
福島]:
 GDPを大きく引き上げてきた高級マンション建設は、もしこれが日本なら不良債権問題になり、銀行の取り付け騒ぎになる。
 しかし、中国では
 「バブル崩壊はおきない」
 「銀行の取り付け騒ぎは起きないし、銀行も潰れない」
と言われています。
 なぜなら、
 「お札を刷ればいいから大丈夫だ」
石]: 
 優秀な中国官僚の出した結論は
 「最後はお金を刷って、財政を投入すれば解決する」
というものです。
 実際に、中国経済はそれを十数年続けてきた。
 いままでに中国経済を支えてきた原動力は
①.一つが「不動産投資」
②.もう一つが「輸出」
です。
 その輸出が2009年に落ちたために、中央政府は57兆円というお札を刷って財政出動させた。
 そうして経済危機を乗り越えた。
 しかし、お札というものは「必要なら刷ればいい」というものではない。
 お金をすってすべての経済問題が解決するなら、こんな簡単な話はなく、どの国も繁栄できる。
 お札そのものには何の価値もない。
 価値があるのはお札が生みだすモノとサービスである。
 実体経済がモノやサービスを生み出して、はじめて健全な経済の姿になる。
 ところがいまの中国は、モノやサービスはさほど増えていないのに、お札ばかりを吸って貨幣供給を増やしている。
 1978年から2009年めでの31年間に、中国の経済規模は「92倍」に成長した。
 同じ期間で人民元は「705倍」に増えている。
 中国は経済が行き詰まるたびに、景気対策と称してお札を刷ってきた。
 対応するモノやサービスは増えていないのに、お札ばかりが刷られている。
 結果として当然お金の価値が減ってくる。
 お金の価値が減ると物価があがる、すなわち「インフレ」になる。
福島]:
 インフレをとるか、地方政府の財政破綻をとるかというと、中央政府は多分、経済破綻の道をえらぶでしょう。
 「顔」つまり中央政府の色艶はいいけれど、「足」つまり地方政府はダメになっている。
 中国の場合、貧しい人たちの矛先は即、政府には向かわない。
 これは集団を小さい時から摘んでおくという共産主義の特徴といえるでしょう。
 今後、バブル崩壊によって社会不安がさらに進む方向へ向かうと、どうなるか。
 経済活力は落ちるが、社会不安は収まるのか。
 それとも経済がインフレになって食うに困り、怒りが政府に向かうのか。
 このあたり、中国経済の墜落が社会にどんな影響を与えるか、いまのところ分からない。
 中国政府としては、インフレだけは嫌だと思っていることは確かです。
石]:  
 政権が恐れているのはインフレです。
 中国はひたすら数十年間、大量にお金を刷ってきただけで、経済政策は何もしていない。
 インフレというのは、単純にいえば「お金の価値がなくなること」です。
 もう中国経済の破綻は避けられないでしょう。
 インフレの恐怖を政権が嫌がっていると、景気対策は不可能です。
 すべての景気対策は、お金を刷るしかないのです。
 今後の中国経済がどうなるかというと、一つには不動産価格が突然大幅にに落ちて、バブルが崩壊する。
 それによって経済が悪化し、いままで長きにわたって続いてきた高度成長が、そこで終りになる。
 いままでの中国はたとえ資金不足でも、お金を刷ってきた。
 問題はこれ以上刷るとインフレに振られ、インフレを恐れるとこれまでのような紙幣増刷ができなくなってくる、ということです。
 不動産投資が減ると、投資の譲渡利益が減る。
 すると、中国経済を引っ張ってきた最大のエンジンが失職してしまう。
 さらには国内がインフレになると人件費と材料費が上がり、昔のように安いものを作れなくなる。
 ということは中国の輸出も陰りが出てくる。
石]:  
 そうなると出てくるのが雇用問題である。
 おそらくバブル崩壊後の中国で、いちばん深刻な問題は「失業の拡大」ということになるでしょう。
 いまでさえ大学生が就職できない状況なのです。
 インフレが続くと、もはや単純な経済問題ではなくなってきて、大変な社会問題に発展する。
 場合によっては大動乱もおこりかねない。
 そこでインフレを退治するために、金融引締めを行わざるをえなくなる。
福島]:
 「アリ族」と呼ばれる「都市に住む大学卒の高学歴ワーキングプア」層が300万人ほどいます。
 彼らの8割は以上が、ネット言論によって
 「世の中を変えることができる」
と考えている。
 「アリ族」はネット上での社会変革のよびかけや体制改革運動にはまりやすい傾向があり、当局もそのあたりは十分警戒している。
石]:  
 民主化運動については、起きるとしたら条件が2つあると想います。
①.一つは中国経済の行き詰まりです。
 高度成長が続くうちは、庶民も実利主義ですから多少のことには目をつぶります。
 「中国経済は常に成長する」
 という神話があれば、いまは苦しい立場にあっても
 「これから成長の果実の分け前を享受できる」
と信じて何とかやっていくでしょう。
 しかし、高度成長が終わるとなると、話は別になります。
 社会のパラダイムが変わり、社会的雰囲気も生活水準も一変する。
 そのとき何かが起きる。
②.もう一つの条件は、政権の意思統一が図れなくなることです。
 共産党政権は、天安門事件から2つのことを教訓としてえたのです。
 つまり、
 「経済成長を続けること」と、
 「政権内の意見の食い違いや分裂を最小限にとどめ、意見の食い違いがあっても表に出さないこと」
 という2つの要素を堅持し、体制を維持してきた。




中国戦闘機、スタンバイへ


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