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JB PRESS 2013.01.23(水)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36982
(英エコノミスト誌 2013年1月19日号)
身構える中国と日本:開戦を告げる太鼓の音
東シナ海に浮かぶ小さな島嶼を巡る武力衝突が近くに迫ってきている。
最近、中国のテレビを見ている人は、日本が尖閣諸島、中国が釣魚島と呼ぶ島々を巡り、日本との戦争が始まるのは時間の問題だという結論に至るかもしれない。
それもあながち間違いではないかもしれない。
日本が昨年9月、民間人が所有していた3島を「国有化」すると宣言して以来、長らく島嶼に対する日本の主権に異議を唱えてきた中国は、島の支配権を維持する日本の決意も試すようになった。
その結果、双方が島を所有していると主張し、双方が島が自国の施政下にあるように振る舞っている。
1月半ば、中国はすべての島と岩礁の測量・地図作成を実施する計画を発表した。
このままの状況が続くはずがない。
■「頭を冷やす」よう求める米国
ムードの悪化に対応し、オバマ政権で国務次官補を務めるカート・キャンベル氏は1月半ばに東アジアに飛び、「頭を冷やす」よう求めた。
今はむしろ頭に血をのぼらせることが流行っている。
日中両国における最近の指導者交代が緊張を和らげるかもしれないという期待は、落胆に終わった。
日本総合研究所国際戦略研究所の田中均氏は、右派の国家主義者である安倍晋三氏が昨年9月に自民党総裁に選ばれたことは、日本は中国に対してもっと強硬な態度を取る必要があるという意識に影響されたと指摘している。
安倍氏はまさにそれを約束した選挙戦を経て、12月に首相に返り咲いた。
それ以降、中国も島々に対して一層強く出るようになった。
既に、退任を控えた胡錦濤国家主席が昨年11月、5年に1度の中国共産党大会の演説で「海洋大国を築く」という中国の野心を宣言している。
中国の意図がここまではっきり明言されたのは初めてのことだ。
胡錦濤氏の後を継ぎ3月に国家主席に就任する予定の習近平氏は胡氏ほど無表情ではないが、米国との折衝にあたり前任者たちのような慎重な態度を貫くかどうか分からない。
多くの中国人が嫌う日本に妥協することに何の利益も見いださないことは確かだろう。
そして軍事経験がほとんどない習氏は強い最高司令官と見られたいはずだ。
こうした事情を背景にして、
中国で軍事学者のテレビ出演が流行している。
時事問題を扱う番組では、実戦経験のない軍人たちが釣魚島についてもったいぶって解説している。
新聞は武力衝突の可能性が高まる状況について、一様に主戦論的な分析を喧伝している。
■尖閣周辺に中国公船4隻、外務省が駐日大使呼び抗議
彼らは作り話をしているわけではない。
先月は、中国の国家海洋局所属の小型機が、日本が尖閣諸島上空の自国領空と見なす空域に侵入した。
日本の地上レーダーに探知されないほど低く飛行したために確認が遅れ、F15戦闘機8機の緊急発進(スクランブル)は効果を発揮できなかった。
その後、日本は空中警戒管制機(AWACS)を配備した。
1月7日には、中国の巡視船数隻が13時間以上にわたり島の近辺を巡回した。
日本の当局者によれば、かつてない長さの滞在時間だという。
そして1 月10日、島の近くを飛ぶ中国の飛行機を阻止するために日本のF15戦闘機2機が緊急発進した時には、中国側も自国の戦闘機を緊急発進させた。
■警告射撃は「開戦の1発目」?
日本の航空自衛隊は現在、中国機が領空に侵入してきた場合に警告射撃を行うか否かを検討している。
実際に行えば、1987年に旧ソ連が領空侵犯した時以来初めてとなる。
中国軍事科学院の彭光謙(ポン・グワンチエン)少将は中国のウェブサイトの座談会で、警告射撃は「開戦」の1発目を意味すると話し、そうなれば中国は「遠慮なく反撃」すべきだと述べた。
日本の報道によると、米国も日本に警告射撃を行わないよう忠告したという。
激しい論調にせよ広く読まれている北京の新聞「環球時報」は、日本は思いとどまらないかもしれず、
「我々は最悪の事態に備える必要がある」
と主張した。
記事によると、日本は「中国封じ込め」という米国の戦略の「先鋒部隊」になったという。
これが意味することは、中国は、論争の的の島々が日米安全保障条約の適用対象であることを明確にした米国との戦いにも備えるべきだということだ。
戦闘の危険性はめったに中国の視聴者に説明されない。
武力衝突に発展した場合、総じて中国が挑発者と見なされるだろう。
また、中国にとって
日本は世界で2番目に大きい貿易相手国であり、
対中投資も世界トップクラスだ。
武力衝突の波及効果としてアジア地域で中国に対する不安感が高まり、
インド、ベトナム、フィピンなど、やはり中国との領土紛争を抱えている国々は、これまで以上に熱心に米国に支援を求めるようになるだろう。
■失うものが多すぎる
日本との紛争が対米関係に深刻な亀裂をもたらすリスクは、一部の中国外交官の頭を悩ましているはずだ。
その多くは、米国との間に亀裂が生じたら、尊敬される世界的大国になるという中国の野望が挫折すると考えている。
このため結局は冷静な意見が通るかもしれない。
戦闘が失敗に終わった場合、中国の国家主義者の感情を煽り、彼らの目に映る無能さのせいで、
国家主義者が共産党に背を向ける恐れがある。
中国軍は近年、急激に最新鋭の武器を購入してきたが、
戦闘に勝つ力に自信を持たせてくれるかもしれない実戦経験がない。
また、戦力投射について言えば、問題の島嶼は中国本土よりも日本の方に近い(同じく領有権を主張している台湾も、中国本土より島に近い)。
しかし、最近の中国の外交政策の動きは、以前にも増して予想しにくくなっている。
政府高官の多くは、中国が強くなる一方で、世界金融危機や国を消耗させる戦争で米国が弱体化したと考えている。
また対外的な強さは国家主義者である習氏に、国内問題に対処する際に多少のリスクを取る余地を与えるかもしれない。
ここ数週間、習氏は前任者たちよりも多少柔軟性があると思わせる兆候がいくつか見られた。
多くの国民に支持され比較的リベラルな新聞社の記者たちがストを起こした最近の重大局面では、関与した記者たちにこれといった処罰もないまま解決に至った。
1月半ばに北京その他の都市で息が詰まるほど深刻なスモッグが発生した時には、中国の報道機関はいつになく自由に大気汚染について不平を書いていた。
政策立案に対する習氏の掌握力は測り難い。
中国共産党の最高意思決定機関である政治局常務委員会で、誰が外交政策の日々の運営を担うのか(また担う人がいるのか)は、まだ数週間ははっきりしないだろう。
過去10年間は、常務委員会には外交政策を専任で扱う人は不在だった。
日本との緊張の高まりが、継承を巡る権力闘争によって指導部の意識が散漫になっている表れである可能性もある。
明確な方向性を欠く中、官僚たちが自分たちを強く見せようとしているのかもしれない。
一方、安倍氏は1月16日、首相就任以来初の外遊でベトナム、タイ、インドネシアの歴訪に向けて日本を発った。
訪問先にベトナムが入っているにもかかわらず、安倍政権の関係者は、
民主的な友好国との関係強化を図る「価値観外交」
について語っている。
■メドが立たない緊張緩和
この外遊は表向き、急成長を遂げる地域との経済的な関係を強化することが目的だったが、中国の脅威に対抗することも同じくらい差し迫った動機だと思われる。
日本の一部の専門家は、3カ国訪問は過度に挑発的だと考えている。
中国は恐らく安倍氏の外遊を、外交的な対中包囲網を敷く試みと見なした。
たとえ武力衝突が避けられたとしても、緊張は続く。
田中氏は、少しでも緊張を緩和させるために欠かせない3つの要素を挙げた。
すなわち、
①.国民感情を鎮めること、
②.2国間関係の重要性について再確認すること、
③.そして尖閣諸島について話し合う方法を見つけること
だ。
今のところ、どれ1つとしてメドが立っていない。
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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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冷静に読んでいくと、
日本については「引かない」
だろうという予測にたっている。
そのため
1).中国の出方の分析と、
2).もし戦争が起こったばあいの中国の損失について
書かれている部分が多い。
日本の損失にはまったく書かかれていない。
日本はわかりやすく記事になりにくいのに反して、中国は動きが不透明なため予想がつけにくいので言葉数が多くなってしまうせいかもしれない。
中国関係のメデイアはどれもこれも日中開戦によって、
「日本は中国市場を失いことになるのだぞ」
という脅しをかけてくる。
『エコノミスト』はそういうことは言わない。
日本は中国への最大の投資国だという、だけである。
記事のなかで注目すべきは2つ。
①.中国人は日本に妥協することに何の利益も見いださないことは確かだろう。
②.そして軍事経験がほとんどない習氏は強い最高司令官と見られたいはずだ。
という’部分だろう。
この2つからすれば、中国は戦争を仕掛ける可能性が高くなる。
日本国内はほとんど冷静だが、記事によれば中国国内は戦争論で沸騰しているという。
とすれば、当局はこのまま済ますわけにもいかないだろう。
何かドラマチックな動きをするはずだ。
何かドラマチックな動きをするはずだ。
もし、安易な解決を行おうとすれば
①.国家主義者が共産党に背を向けるかもしれないし
②.最新鋭の武器は買ったが、戦闘に勝つ自信を持たせる実戦経験がない
ので、使ってみたくなる、ということになる。
8月のデモで煽ったはいいが、出口が見いだせず、
「メドがたたない」
状況に追い込まれてしまっている、ということになる。
中国としては手詰まり状態を打開するために、大博打を打つことも考えられる。
また、もしかしたら、他の国境で小競り合いを起こすか、民衆の目を向けさす事件を実行するという手段もある。
もし、そうだとした何が起るだろう。また、もしかしたら、他の国境で小競り合いを起こすか、民衆の目を向けさす事件を実行するという手段もある。
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レコードチャイナ 配信日時:2013年1月26日 17時0分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=68846&type=0
好戦的言説が飛び交うようになった中国とその失敗―英紙
2013年1月22日、英紙フィナンシャル・タイムズは記事
「好戦的言説が中国に帰ってきた」
を掲載した。24日、環球時報が伝えた。
長年にわたり西側諸国は中国に軍の透明度を向上させるよう促してきた。
今、中国はまさにそのとおりにしているのだが、西側諸国の望む形ではなかった。
そう、中国は今、率直に戦争について語るようになったのだ。
先週、中国共産党中央軍事委員会の許其亮(シュー・チーリアン)副主席は
「すべての仕事を勝利のために集中させよ」
と訓示した。
ここ数カ月、中国共産党及び人民解放軍の指導者、そして官制メディアはこうした言葉を伝え、
平和ではなく戦争について語ることが多くなっている。
こうした動きにタカ派は大喜びだ。
ある退役した海軍将校は中国は軍事近代化を利用して近隣の小国を威嚇するべきと発言した。
別のタカ派評論家は平和主義とロマン主義を捨てようとコラムを書いた。
中国の実際の動きも過激なものとなっている。
尖閣諸島における日本との対峙(たいじ)で、
中国政府はまず船舶を派遣した。
次に民用機を、
そして最後には戦闘機まで登場する
ようになった。
こうした軍事的威嚇は成功する可能性もある。
あるいは中国から見れば成功しているのかもしれない。
しかし別の面で見れば中国は敗北を喫している。
長年にわたり中国政府は脅威論が唱えられないよう努力してきた。
しかし、このままでいけば中国は脅威だとみられるのは必然だろう。
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好戦的言説に中国が走る理由は2つ。
1].まず、経済がピークに達し、減速傾向になり、社会的不満が広く発生してきたためのガス抜き。
民族主義を高揚するには軍事的発言がてっとり早い。
2].次は解放軍が共産党の手を離れつつあること。
解放軍は軍隊だから、発言はどうしても軍事的にならざるをえない。
先端の武器を大量に買い込んでいるため、負けそうだとはいえない。
客観的に見るよりも、感情的に発言してしまうのはいたしかたない。
この2つの相互作用が、社会言説を好戦化させているのだろうと思う。
そして、一度好戦化してしまった言説は元にはもどらない。
いくつくところまで行くしかないように思える。
それが対外的に起るのか、国内的に起るのかは不定であるが、
一度荒れて血をみないと収まらないのではないだろうか。
【中国戦闘機、スタンバイへ】
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